タイトルは冗談です。一度こういうタイトルをつけてみたかっただけw。でも、以下はまじめに、シリコンバレーのエンジェルは多ベンチャーに投資しているが1件当たは割合小額、という話。
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最近シリコンバレーではエンジェル投資で50万ドル、100万ドルと調達するベンチャーが多々ある。「きっとみんなお金持ちだから1人でそれだけ出す個人投資家がたくさんいるのだろう」と思うかもしれない。でも、そんなことはなくて、エンジェルの一社当たり投資額は2万〜5万ドル(2〜5百万円)程度、ちょっと多めで10万ドルくらいなのが一般的だったりする。
一方で、大規模なベンチャーキャピタル(VC)ファンドでも小額投資をするケースや、アーリーステージに特化した小規模なファンドも増えて来ており、そういうところは一件当たり10万ドル〜40万ドルくらい出資することが多い。
なので、ベンチャー側は、そうした人やファンドをかき集めてがんばって資金調達しているのであった。
Secretの場合
では、最近の例を見てみましょう。
そんなSecretの投資家内訳はこんな感じ。
シード:2013年12月 - 143万ドル(約1億4300万円)
- Google Ventures
- Kleiner Perkins Caufiled & Byers
- Matrix Partners
- Index Ventures
- Initialized Capital
- SV Angel
- Fuel Capital
- S-Cubed Capital
- Harry Cheung
- Brett Slatkin
10投資家なので、平均14万3000ドルである。これは結構高い。シードとはいえほとんどの投資家がエンジェルではなくベンチャーキャピタル(VC)なので。(逆に言うと「VCのくせにちょっとしか出してないのね」ということになる)。
Google Venturesは言わずと知れたGoogleのVC部門。Kleinerは90年代には一世を風靡したシリコンバレーの著名VC、Matrix Partnersは17億ドル(1700億円)運用するVC、Indexは33億ドル(3300億円)運用するVC。Initialized、SV Angel、Fuel Capital、S-Cubedはアーリーステージ/シードに特化した小型ファンド。Harry Cheungは多分Google employee No.6の人。Brett Slatkinは現役Googleエンジニアで、想像するにファウンダーのお友達。
(InitializedはY Combinatorのパートナーが数名で始めた5千万ドル弱のファンド。SV Angelは90年代から生き残る長老エンジェル投資家Ron Conwayのファンドで小型と言っても1億ドルを集めている。S-Cubedは元Sequoia(という著名VC)のパートナーだったMark Stevensの個人ファンド)。
というわけで、本当の個人は2人(またはMark Stevensを入れて3人)しかいない。そして、お友達君の出資額はおそらく1〜3万ドルくらいではないかと推測。
さて、Secretは3ヵ月後にシリーズAを以下の人々より調達している。
シリーズA:2014年3月 - 860万ドル(約8億6千万円)
- Google Ventures
- Kleiner Perkins Caufiled & Byers
- SV Angel
- Fuel Capital
- Garry Tan
- Alexis Ohanian
- MG Siegler
- Bing Gordon
- Megan Quinn
- Chris Howard
- Brad Silverberg
- Vivi Nevo
- Ashton Kutcher
- Daid Sacks
- Bill Lee
- Pete Cashmore
- Joe Montana
- Rob Wiesenthal
シリーズAの方がシードより個人投資家が多い、というややイレギュラーな調達(でもおしゃれめなベンチャーでは時々ある)。しかしその中身はそうそうたる顔ぶれ。Ashton KutcherにJoe Montanaは言わずと知れた有名人ですね。MG Sieglerは元TechCrunchのライターで今はGoogle Venturesのパートナー、Bing GordonとMegan QuinnはKleinerのパートナー、Chris HowardとBrad SilverbergはFuel Capitalのパートナーでもある(こういうのって職業倫理的にどうなんでしょうね)。Garry TanはPosterousのファウンダー、Alexis OhanianはRedditのファウンダーでどちらもY Combinatorのパートナー。David Sacksは元PaypalのCOOかつYammerのファウンダー、Pete CashmoreはMashableのファウンダー、Vivi NevoはTime Warnerの大株主のイスラエルの投資家、Rob Wiesenthalは元ソニーのCFOでございます。
18投資家で860万ドルだから、平均は50万ドル弱だが、多分これは、個人14人は3万ドル〜10万ドルくらいずつでトータル100万ドルくらい、GoogleとKleinerが300万ドルずつ、アーリーステージファンドの2つが50万ドルずつ、みたいな感じではないかと思われ。(GoogleとKleinerが出した分がもっと多いかも)。
なお、シードからシリーズAまでがたった3ヵ月なのは、ベンチャーとしての話題性の高さを感じさせる。というのも、最近、シードからシリーズAまでには1年半くらいかかるので。(ここ数年、エンジェル投資は容易に集まるようになった反面、シリーズAの調達難易度は増している。この「1年半」は、そもそもシリーズAが調達できたという「優秀なベンチャー」を母集団にした平均ということになる。)
2010年に起業したA社の場合
次に、Secretほどではないものの、かなりインサイダー的なサンフランシスコの若者2人組が起業した某社のケース。アーリーステージファンドと個人が投資をしている。以下公開情報ではないので全て匿名ですが、金額と時期は正確なもの。
シード:2010年6月 - 75万ドル
ファンド
- A 20万ドル
- B 15万ドル
- C 9万ドル
- D 6万ドル
- E 5万ドル
- F 5万ドル
個人
- a 3万ドル
- b 3万ドル
- c 2万5千ドル
- d 2万5千ドル
- e 2万5千ドル
- f 1万ドル
- g 5千ドル
シリーズA:2010年12月 - 426.5万ドル
ファンド
- G 290万ドル
- H 85万ドル
- D 25万ドル
- E 25万ドル
個人
- f 1万5千ドル
2度登場するローマ字は同じファンド(または個人)です。(fの人、それなりに名の知れたサンフランシスコの若手アントレプレナーなのだが、シードでは「友達だから」ということで1万ドルだけだして、「あっ、やっぱりもうちょっと出させてー」という感じでシリーズAにも参加することになったのでしょうか)。Secret同様、シードからシリーズAの間隔が6ヵ月と短いのはすごいが、それでもシードでのエンジェル平均投資額は2-3万ドル(200〜300万円)しかない。
たくさん投資家がいても大丈夫
というわけで、いずれも話題のベンチャーではあったものの当初から結構の数の投資家がいる。
「起業の初期の時点で投資家を増やしてはいけない」とも言われるので、「話題のベンチャーなのに最初からそんなにたくさん投資家を入れて大丈夫なのか」と思う人もいるかもしれないが、その点はしっかりしたかなり業界共通の投資契約書があり、かつ投資家は個人であっても(いまのところ)それなりの資金力を持つ人に限定され、代わりにそういう人は自己責任を負えるはず、というルールになっていることで、あまり問題が生じないようになっている。
(ちょっとテクニカルになってしまうが、最近はAngelListというところがSyndicateという仕組みを始めてもいる。これは複数の個人投資家を1つの会社形式(LLC)に取りまとめて投資をする、というのもので、ベンチャー側から見ると1つの投資家として扱えるという利点がある)。
Secret.lyはSecret
ちなみに、Secret.ly、App Storeで検索しても出てこないので、iPhoneのブラウザでSecret.lyを表示して、サイト上のリンクから辿ってダウンロードしましょう。Secret、Seretlyとグーグル検索してもサイトは出てこないです。故意なのかはたまた・・・・。
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