先週末、シリコンバレーの東大同窓会ランチがあって行ってきた。60人ほど参加して大盛況だったのだが、そのとき、一緒のテーブルに座った人たち(年代は30代がメイン)の親の学歴:
6人の親が高卒・中卒。大学を出た親がいるのは2人だけ。
(親大卒2人のうち一人は韓国出身で今もご両親はソウルにいるそうなので、純粋に日本育ちの人という母集団で大卒の親がいるのは一人だけであった。)
なんでそんなことを聞いたかと言うと、実はかねがね「アメリカに勝手に来て住んでいる東大卒業生には、親が大学を出ていない人が多いのではないか」という仮説を持っていたので、「・・・と思うんですけど、皆さんは?」と聞いたのである。(ま、こういうことが正々堂々と聞けるのも、自分の親が高卒という強みがあるからではある。)
仮説を持った理由は、アメリカに来てから「両親高卒」とか「両親中卒」という東大卒の人に複数出会ったから。それまで、日本では、在学中も卒業後も親しくした知り合いの東大生はみんな親が大卒、しかも大企業の重役、みたいなパターンがほとんどだったので、とても意外に思っていたのでした。
で、8人のテーブルで聞いたところ、
「あーうちも、うちも」
と8人中6人が高卒以下と相成った。
そもそも仮説を抱くに至った地方出身の「親高卒仲間」の知人からは
「でも、親が大学でてない東大生って、大体地方出身だよ。地方では、親の世代だと大学に行くのはそれほどメジャーなことじゃなかったら高卒が一杯いる。東京は親の世代から学歴社会だから。渡辺みたいに東京出身で親が大卒じゃないのは珍しい。」
と言われていたので、さらに同窓会のテーブルで
「東京出身の人は?」
と聞いたところ、隣の席の女性が挙手。しかも彼女は私と同じ高校であった。都立西校という学校なんだが、高校時代も親が大学出ていない人ってあんまりいなかったのに。いと珍し。(彼女がサンフランシスコの今の会社で働くことになったのは、「アメリカで働いてみよう!と職探ししたらオファーもらってビザも出してくれたので来ました」というなかなか真似できないキッカケであった模様。)
ちなみに、一般的に東大生の親が大学を出ている割合はどれくらいだろうと思ってちょっと検索してみたが、あまりオフィシャルなデータはなくて、東大生100人アンケートで、父親の74人、母親の75人が大卒だった、という記事(を参照したもの)を発見。母親の方が一人多いのは中々興味深いわけであるが、そこはまぁスルーして、果たして片親だけが大卒という人がどれくらいいるかはこのデータだとわからないが、まぁほとんどの場合片親が大卒だともう片親も大卒、ということだと仮定しよう。すると、「東大生の親が大卒である確率」=75%。
とすると、8人の東大生が集まって、大卒の親がいる人が二人しかいない確率は
0.75^2 * 0.25^6 * 28=0.38%
(逆に、大卒の親がいる人が6人いる確率は31%と100倍もある。)
ま、8人では統計的に有為ではないが、anecdotalにしてもすごいですねー、と。
さて、かように、日本では滅多に出会わない親が高卒以下の東大生が、シリコンバレーには沢山いる理由の仮説出しをしてみた。
まず私が考えたのは、
1)そもそも親がひいたレールと言うものがない。なので働くに際しても「こうあるべき」という枠組みがなく、海外で働くという選択肢も含め、自由な選択が出来る
これとは全く逆の案を出した人もいて、
2)通常家族がたどってきた道を歩むのが普通なのに、親が大学に行ってないのに自分は敢えて東大に行く、というところで、「枠組みを超えた挑戦をする」という傾向を10代の頃から持っている。だから、「日本で働く」という枠組みを超えるのも簡単
全く違う角度からの意見として、
3)学歴のない親を見て、「日本は、学歴がない人が浮かばれない困った社会である」と実感しており、海外に目を向ける
という人もいた。
理由は不明だが、「親が高学歴じゃなくて東大に行った人」に会いたかったら、シリコンバレーに来るとざくざくいるんじゃないかと思います。はい。
ちなみに当地の同窓ランチは毎年一回開催。来年の案内を受け取りたい方は、こちらの桑港赤門会サイトで登録しておくと、連絡が来ますので是非。
[付記]下記の新案がIM、メール等でやってきました:
4)親が高卒
類友か。ありえる。
5)「そんなことできるわけがない」「頭でっかち」みたいなことを言われてきた人も多かったり、そもそも家で自分が普通だと思う会話ができなかったりして日本に居づらい
これもありえる!物理的に本当に頭が大きい私は、よく家族に「テレビ見えないからそのでかい頭をどけてくれ」とか言われたものである。
ああ、うちは片方高卒、片方は社会人になってから夜間大卒、です。(中途半端だから日本と西海岸の間に落ち着いちゃったのかも)
なんとなく、権威とか既存のハイアラーキを批判的に見るように躾けられたような気はします。
投稿情報: shiro | 2009/02/24 00:18
偶然に仮説をたてても。それに、偶然というのは偉大な統計学ですよ。占いともいうけど。偶然に必然を探すのをパラノイアといいます。このパラノイアの資質がシリコンバレーを形成しているといって過言でありません。で、仮説を付け加えれば、大卒の親であれば、大学進学は必然です。低学歴では、偶然です。偶然東大を受けて偶然受かったということで、偶然だと思いたくないから、パラノイア嗜好が育って、シリコンバレーが居心地が良いところに思えて、これも偶然なんだけど、シリコンバレーに行ってしまった。楽しい人たちなんです。有名な、シリコンバレーのあの法則だって、学問的に証明できないのは、偶然だからです。で、このコメントを読んで、これは何かのヒントだと思える人は、さっさとシリコンバレーにいってください。成功しますよ。笑
投稿情報: 青島 | 2009/02/24 01:14
父です。
祖父は地方商業高校出で、父は東大大学院卒。京大や東北大にも行っていたみたい。
叔父にも1人東大出がいます。
シリコンバレーは行っていませんね。
投稿情報: K | 2009/02/24 01:58
フィナンシャル・タイムズの記事を思い出しました。
http://news.goo.ne.jp/article/ft/business/ft-20090219-01.html
投稿情報: 働く母親 | 2009/02/24 04:03
私も4番の「親が高卒の人たちはお互いの独特の雰囲気を感じ取ってついつい固まってしまう」に1票。
多くの人にとって、価値観が似ている人と付き合う方が、価値観が異なる人と付き合うよりも快適であることが多いでしょうし、その価値観の大部分は家庭で育まれることを考えると、育った家庭環境が似ている人同士が固まりやすいんじゃないかと。
ちなみに、うちの会社の共同創業者は、全員が、大卒かつ大手企業に大卒後ずっと勤めてそこそこ出世(最後が部長クラス)した父親と、同じく大卒で専業主婦の母親をもちます。
本人同士は、趣味も性格も全然違うんですけど(笑)
投稿情報: charley | 2009/02/24 04:39
初めてコメントさせていただきます。
確かにこの現象はおもしろいですね。もし3番の理由を持つ人が多ければ、日本はえらく住みにくいことになってしまうので、出来ればそうなって欲しくないところです(笑)
投稿情報: 松本孝行 | 2009/02/24 07:20
初めてコメントさせていただきます。いつも非常に楽しく読ませていただいていますが、今回はコメントを書かずにいられませんでした。私も東大卒、両親とも高卒、アメリカ東海岸在住で研究者です。ついでに都立富士高出身です。渡辺さんが、西高出身とは知りませんでした。私の時代はまだ西高と富士高が選択できない時代でしたので西高出身というとかなり近い感じがします。(渡辺さんの世代では違うかもしれませんが、、)。渡辺さんの仮説に関してはどれも、面白いと思いますが、私の場合は、こちらにきてから、はまってでられなくなっているだけです。
投稿情報: t-posaune | 2009/02/24 11:08
エリート>庶民の図式を大卒両親家庭以上に意識しながら育った結果、より上位を求めて米国>日本の図式に潜在意識下でスッポリはまったのではないかと思うのですが、いかがでしょうか?
腐っても鯛、日本も米国も腐った企業や政治家が沢山いる一方で、良いものは良いと純粋に認めてグイグイと支援・投資していけるマインドと財力を持っているのは、米国>日本じゃないですかね。
上流を意識して、国境を意識しなければ、そういう環境で腕を試したいと思うのは自然なの事かと。
投稿情報: eakas | 2009/02/24 15:19
chikaです。
shiro-san家もですか。ははは。特に理一あたりがそういう傾向が高いかも。日本で理系は浮かばれないし。本気で統計取ったら面白いかもしれませんね。
>偶然に必然を探すのをパラノイアといいます
むしろschizophrenic傾向では?Beautiful Mindみたいに、全く意味のないものに相関を見つけちゃうという・・・
>働く母親-san
「親が高卒」系は、両親共働きなケースも多いと思います。専業主婦は贅沢、っていうアメリカの傾向は、日本も実は昔から一緒なんじゃないのかなぁ・・・。
>大卒かつ大手企業に大卒後ずっと勤めてそこそこ出世(最後が部長クラス)した父親と、同じく大卒で専業主婦の母親
私は日本にいる間は周りのほとんどがこういう人だったので、「そういう人ばかり固まっている」というのは別に不思議に思わないんですが。。。。どうでしょ。
>西高と富士高
似てますよね、かなり。女子比率が低いか高いかの違いくらいでしょうか。あんなずぼらでいい加減な高校はなかなかないというくらいでしたが。
>より上位を求めて
似て非なるんですが、「より楽なのを求めて」っていうのもあるかも・・・。ゼロベースでより楽チンに生きていける道を模索しているうちに日本に帰れなくなるという(笑)
投稿情報: chika | 2009/02/24 17:24
はじめまして。la dolce vitaさんのブログからやってきたbeaverと申します。アメリカとカナダで10年間仕事をしています。「成功した人たちの育った環境に共通したものがあり、その環境は今日の成功に必然であった。」というMalcolm GladwellのBlinkという本のaudiobookをちょうど聞き終えたところです。「あれ!ここにも似た話が!?」と驚きながら、記事を読ませていただきました。
私は東大出ではありませんが、ごく普通の私立大学を出た両親の娘である自分が、勝手に北米に来て住んでいる理由は1です。教育熱心な友人の親は塾や受験の情報に詳しくて、子どもにもいろいろ助言をしていました。それを尻目に、のんびりした両親をもった私は自分で情報を集めて、判断して、行動に移さなくてはいけませんでした。だからいまだに、自分でレールをしかなくては前に進めないと思い込んでいる節があります(笑)。
大学卒業後の進路で日本の枠組みを外れることにも、抵抗感がありませんでした。学生のころにみた成功例はほとんどすべて男性だったので、自分の居場所はどこか違うところにある気がしていました。
投稿情報: beaver | 2009/02/24 20:35
beaverさん
> 学生のころにみた成功例はほとんどすべて男性
それは確かに的を得ていますね。
自分は男なので、それにプラスして年長者を加えたいです。
年長者有利な待遇の下、日本では愚鈍な上司が横行する環境が整っているので。
こっちで仕事をするメリットは、愚鈍だと日本よりも速攻で自然淘汰されるので、フラストレーションを感じずに単純明快で良いです。
投稿情報: eakas | 2009/02/25 05:37
渡辺さん、うちの家内も西高(88か89年卒)です。OB、OGの話になるとかならず吉村真理の名前がでてきます(辻井喬もいるのに・・・本旨と関係ないツッコミで失礼しました)
投稿情報: hsakawa | 2009/02/26 09:24
はじめまして。いつも楽しく拝見させて頂いています。このブログを知る前の渡辺千賀さんのイメージは、”雲の上の近寄りがたい成功キャリアのお方”だったのですが、今は、勝手に”身近に感じる成功キャリアのお姉さま”です。
今回も興味深いトピック、楽しく読ませていただきました。今、夫婦40歳にして、アメリカに留学しています。東大出身ではありませんが、互いに私立大学を卒業し、大手の企業で働き、二人でお金を貯め、今があります。主人の親は高卒、私の父は働きながら夜間大学、母も働きながら短大卒業の資格を得ました。決して、能力的な問題ではなく、当時の経済的、社会的な状況からの選択だったと思います。
そうした”選択”を、単に、『低学歴』と一言で整理してしまうことに、少し抵抗を感じて、今日は、はじめてコメントさせていただきました。
その抵抗は、留学準備期間中に受験した「GRE」の際にも感じました。PC上で試験開始の数分、受験者のプロファイルを入力するのですが、そこで両親の学歴を尋ねてきます。両親の学歴と受験者の知識レベルを計る意図なのか・・・わかりませんが・・・・。
※ちなみに主人は小石川です。いつも『西高はすごいんだよ』と教えてくれます。(笑)
投稿情報: Cow | 2009/02/27 09:51
40歳、夫婦で留学ってものすごいチャレンジャーですね。尊敬・・・・。
高学歴=good、低学歴=badではなく、単なる現象の名称として書いたんですが・・・・ダメですかねー?
GREがなぜ統計取るのは知りませんが、基本的にアメリカの大学(特に学部)は親が低学歴だと入りやすいことが多いです。affirmative actionってやつですね。両親high school dropoutとか最強。disadvantaged environmentで育った人により大きなチャンスを与えようと。想像ですが、GREは単に「本当に親の学歴で点数が変わるか」の統計を取ってるのかも。correlationがわからないと、何をどうcorrectすれば、disadvantagedな人をaffirmすることになるのかわからないですし。
投稿情報: chika | 2009/02/27 12:15
東大受験生を応援するブログを書いているパートのオバちゃんです。
息子も田舎の公立高校出身です。
息子のクラスで東大に現役合格した子の母は全員パートのオバちゃん。
主人は、「東大法学部なんか行くとロクな人間にならん!」と言ってました。
ブログを書き始めて気づいたのは、とっても教育熱心な方のお子さんが、意外に伸び悩み、大学受験で巧く行かない例が、多い点。
東大受験の権威、和田秀樹さんや娘が東大に入学した本当の理由って本を書いた、ゆとり教育の陰山英男氏など、最高の遺伝子に最高の教育環境だったろうにって思います。が、東大現役合格していませんし。
入学式で親離れ子離れを言われた時は、単に東京大学の入学式を見てみたいという好奇心からよ、とちょっとムッとしました。
でも、ブログを書き始めて見えて来た子離れできないパパママ集団。
書くのも憚られるほどの、幼稚園の入園式?と思う親達を見て、現状がどうか外にバレないようにと祈るばかりです。
投稿情報: ママゴン桜 | 2009/04/27 04:35
はじめまして。
現在東大目指して頑張っている高三娘を持つ高卒起業父です。
親の心境等がわかるかと思い検索していてこのブログに出会いました。
なるほど東大に行く人はこういう覚めた目で親を見、周りを観察するのかとあらためて感慨に耽りました。
長男は実家を離れて東北大大学院在学中ですが、娘はとにかく負けず嫌いで、兄の上を行きたいというのが動機のひとつのようです。男性女性の感覚の違いなのか、息子は親と自分との相関関係にはまったく興味がなさそうですが、娘はたまに聞いてくることがあります。
正直もう子供の進路に口出しすることはなく、それぞれが決めたことを後押しするぐらいです。人としてきちんとした生き方さえできればそれでいいという心境です。これは高卒親の特徴なのでしょうか、だから子供がシリコンバレーでもどこでも行ってしまうと。
とにかく今は子供が手許にいる時間を楽しむだけですね。
投稿情報: ezy007 | 2011/10/13 17:51
あはは。思わず笑ってしまう。
偶然こちらを見つけました。
私も両親高卒です。東大工学部応用化学ドクターで、現在ロスアンゼルスでソフト関係の零細企業やってます。
アメリカに来た理由は、自分の子供に日本の教育を受けさせたくなかったから、ですね。
投稿情報: tam | 2014/02/22 12:17