ロッククライマーが、岩にはさまれた右腕をポケットナイフで切り落として脱出したという出来事が先週あった。詳細はワシントンポストの記事、Climber Cuts Off Arm To Free Himselfへ。
聞くだに恐ろしい。何が恐ろしいといって、生きて帰ってきたロッククライマー氏の体力が恐ろしい。事の顛末を要約するとこんな感じだ。
1)Tシャツと短パンで狭い峡谷を登っている最中に、右手のひじから先が数百キロの岩の下敷きに
2)そのまま5日間救出を待つ(ちなみに、夜なんか結構冷え込むんじゃないか。Tシャツに短パンだったら、それだけでもう死にそうである。その上に、右手はぐっしゃり、しかも3日目には持参した水もなくなる)
3)5日目についに決断し、ポケットナイフで右手を切断、その後、20数メートル絶壁を降りて10キロ強歩いたところで救出隊に見つけられる
このロッククライマー氏は白人なのだが、白人熊説、というのがあって(というか、私が言っているだけだが)白人の中には、人間より熊に近い体力の人がいる。2年前にも、白人熊説を裏付けるようなこんな話があった。
甥の腕を食べた鮫を素手で岸までつれてきて腕を取り戻したおじ
これは2001年にフロリダで起こったことだが、8歳の男の子が鮫に腕を食いちぎられる。それを見ていた男の子のおじが、鮫を素手で掴んで岸まで連れて行き、そこで鮫を殺して、体内から腕を取り出し、病院にもって行く。腕は甥の体につけることができた。鮫は体長2メートル強。腕を食いちぎられるという惨状を目の当たりにし、その上で自分より大きな鮫を捕まえて腕を取り戻そうとする、なんていうことができるのは果たして本当に人間なのであろうか。(詳細はCNNの当時の記事へ。)
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この間、とあるシリコンバレーのoptical networking系スタートアップで働く日本の人が「考えるということには体力も重要。体力がないと、ここ一番でぐっと考えを深める時に集中力が続かない。」というようなことを言っていたが、とてもよくわかる。体力がないというのは、知恵でわたっていく商売でもかなりハンディなんである。となると、熊的体力の前では、ひ弱な東洋人にはハンディあり。白人でも理系だったらひょろひょろか、と言えば決してそんなことはない。右手切断ロッククライマー氏も、カーネギーメロンで機械工学を専攻、インテルでエンジニアをしていた、という経歴。(その後、山登りにかけるため退職)。こういう人(熊)と対等に戦うには、心してかからないとなりません・・・・。
ほとんど信じがたい体力ですね…
しかもこれ、Canyonlandだそうですね。マウンテンバイクで走ったことがありますが、見渡す限りの荒野といった印象で、昼間は焦熱のうえものすごく乾燥し、水なしではあっという間に脱水症状になるようなところです。夜は夜で夏でも相当冷えます。コロラド川の川床まで降りれば木陰もありますが虫が凄いです。
何かあって動けなくなった時にたまたま誰かが通りかかる、なんてことは到底当てにできなさそうなところなので、彼が究極の選択をしたのは頭では理解できます。が、それを実行に移してかつ生き延びるということは自分にはできなさそうです。(一回のバイク単独行で、自分はそういうタイプではないと覚りました。)
でもこの人、2月にも雪崩に埋まって死にそうになったそうで…
投稿情報: shiro | 2003/05/05 02:13
うーむ、やはりCanyonlandはそういうところでしたか。そんなところをbike単独行とは勇気がありますね。。。
私は、このクライマー氏のようなことになったら、岩が右手の上に落ちてきたところで意識不明になり、そのまま凍死するという気がします。
投稿情報: chika | 2003/05/07 23:41
なんかこの話を聞くと、企業のレイオフを実施するマネジメントとダブりますね。全体が生き残るために、一部を犠牲にする。頭では分かるが、実行できる人は、このクライマー氏のような強靭な体力と決断力が必要なんじゃないか、と。
あと、日本人だったら、クライマー氏のような状態になると、「腕を切ってまで生き残るぐらいなら、潔く死を迎える」という精神状態になるような気もしますね。不幸の美学。むかし、友達と話していて、「アメリカだと不幸のどん底に落ちた人が復活するのが好まれるが、日本だと不幸な人はがんばるんだけど悲運のまま(例:赤穂浪士)というのが好まれる」などということを話していたのだけど、実際どんな感じですかね?
投稿情報: nob seki | 2003/05/11 09:48
Seki-san,
レイオフの話は、どうなんでしょうねぇ・・・。昔働いていた三菱商事で年功序列をもじって「健康序列」というのを同僚と話したことがあって、つまり出世するのは体の強い人、ということ。出張と飲みと残業とをグルグルこなして、しかも社内政治で駆け引きしてストレスため、それでも体を壊さない人が重役になれる、という。。。。だから、トップは少なくともフィジカルには頑強なんじゃないかという気はするんですけど。
ちなみに、潔く不幸を認める美学、は確かにアメリカ社会ではあんまり受け入れられないでしょうね。
去年の頭にこんなことがありました。中国本土で重度の心臓病の赤ちゃん(女)が、アメリカの慈善団体の協力でアメリカで手術を受けられることになったのですが、9・11の影響の資金難で援助の話がなくなります。しかし30そこそこの母親は、それでも諦めずに親戚一同から資金をかき集めてニューヨークに来て、空港で他の中国人の人に事情を話してその場で1000ドル(確か・・)恵んでもらい(!)、さらに道端で赤ちゃんを抱いて物乞いをして旅費をためてベイエリアまで来て、さらにfund raiseをして数十万ドルの手術代を捻出、子供の命を救ったのです。
一人っ子政策で、女の子の赤ちゃんは生まれても孤児院に出してしまうこともある中国という環境から、英語も全く話せな母親のとった行動は、ほとんど狂っていると言ってもいいのでは。でも、こういう話が好きです、アメリカって。fund raiseも、事の顛末を書いた新聞記事が大きく出たらどんどん集まったそうです。
キリスト教の影響もあるんでしょうか。ヨブ記のヨブなんて、家族を殺されようが、全財産を失おうが、何があっても諦めないですから・・・・。
ちなみに、直接関係ないかもしれませんが、実は私、10代の頃から赤穂浪士の話が嫌いでした。大勢の藩民(というのか?)の生活を預かる身でありながら、自分の命が危険にさらされたわけでもないのに吉良に切りかかる浅野匠の無責任さに無性に腹が立ったものです。。。そういう風に思う私のような人間が流れ着いちゃうのが、アメリカという国なのかもしれないですね。
投稿情報: chika | 2003/05/18 19:55
この「白人=熊」説、面白いので友人に紹介しようと思ったのですが、どうやったら一発でたどり着けるかふと考え、Google で「白人 熊」と打ったら思惑通り、先頭に出ていて見事一発で(というか二発目?)たどり着けました。
ダイビングしてると頭が薄くなった恰幅のいいおじさんが海パンだけで潜っている(この図、海坊主みたいなのですが)のを見ると、この説を思い出します。
投稿情報: Motty | 2004/07/15 22:32
熊並体力のその白人の方もさることながら、腕をポケットナイフで切り取る痛さに耐えられるだけの精神力と決断力には驚かされます。アメリカはメルティングポットで白人だけの社会ではありませんが、アメリカへ行くとその独特の生活リズムとエネルギーに圧倒されます。しかしそのリズムに乗ると自分がとても生き生きとしているのに気が付きます。体力って精神的なものと強い結びつきのある気がします。
投稿情報: 鈴木 | 2005/04/22 20:02
>体力って精神的なものと強い結びつきのある気がします
笹川会長もおっしゃっていた通り、「健全な精神は健全な肉体に宿る」ですのでまずは体を鍛えよう、というのはいかがでしょうか・・♪
投稿情報: chika | 2005/04/24 20:59
はじめまして。偶然見つけて以来、楽しみに読ませていただいています。(大笑いすること数回)コメントしているのも、シリコンバレーのすごい技術者が多いようなので、気後れして失礼ながらROMってました。(^^)
が、「白人=熊」説には、もうたまりません。
私もつねづね彼らを見ていて、彼らの強さ・体力は、実感していました。強さと言っても「力の強さ」だけではなく、「生き残れる強さ、気の強さ」も含まれています。
まわりには、有名企業にお勤めのパパやママがたくさんいますし、その子どもたちも相当強いです。さすが、開拓時代を生き抜いてきた人たちだと実感しています。「白人=熊」は、うまく言い表しています!
日本人は飢えを生き抜いてきた人種の「強さ」なのであり強さの質が違うのでははないかとも思います。オリンピックなどで「日本はメダルが少ない」とか言われていますが、彼らのような人種と戦ってメダルが1個でもとれるだけでも拍手ものではないかと、最近は思っています。
投稿情報: Sevi | 2005/08/06 19:05
>日本人は飢えを生き抜いてきた人種の「強さ」なのであり強さの質が違う
アメリカ人が日本に行くと
「日本のサラリーマンは、毎日毎日飲みに行って、よく体力が持つ。信じられない強靭さだ」
と驚くことが多いみたいです。
「日本の同僚たちは毎日朝3時まで飲んで、翌朝9時には出勤している。ここはトワイライトゾーンか!!」
と言ってたアメリカ人もいました。
あれは、なんなんでしょうね。日本人の体力はソバのように細く長いんですかね。
投稿情報: chika | 2005/08/09 10:40
アメリカ人も働く時にはとってもよく働きますよね。一般的に、日本人の方がオフィスにいる時の生産性が低く、効率悪いが長く働くことでカバーしようとしているといったら言い過ぎかな。私は一生懸命集中して働くと8時間以上働けません。それ以上私が働いている時は、オフィスにいても怠けている気がします。
朝まで飲んでいても頑張ればオフィスにいる事くらいはできます。実際、評価も曖昧で、長く(というより遅くまで)オフィスにいると一生懸命働いているという評価(=いい評価)になることが一因の様に思えます。つまりは成果主義っていっても”努力”に対する評価で、成果に対する評価ではないってことでしょうかね。ちょっと極論に走りすぎました。:-)
「天才とは努力し得る才である」 ゲーテ (だったかな?)
投稿情報: giveme5X2 | 2005/08/09 18:21
体力と知力の総合なら山野井さんも負けていませんよ。
http://www.evernew.co.jp/outdoor/yasushi/yasushi4-02.htmの02/10/29のところ見ると冷静さが人とは思えません。なんかのテレビでやってましたが、両目が見えず奥さん助けに行こうとする時手探りでピトンを打つ位置を探らないといけなかったんですが、「一番使わない指を考えて左手の小指かなと思って左手の小指で岩を触り、凍傷で使い物にならなくなったら次に右手の小指がいらないかなと思って右手の小指で岩を触って・・・」と人ごとのように話してました。
最近クマにジョギング中に襲われましたが噛まれた時とっさに「無理引き抜くと腕がちぎれる」と考えてじっとしてたらしいです。その後病院で言った言葉が「生きている熊に触れられるなんて・・・感動」(http://www.evernew.co.jp/outdoor/yasushi/yasushi4.htmの08/09/25)
ピンチに立つと冷静になる人っているんですねー。自分は立った事がないのでどうなるのかわかりません(わかりたくもないですが)。
投稿情報: h2 | 2008/10/19 06:26
あれ?
リンクがおかしくなってしまいました、すいません。
投稿情報: h2 | 2008/10/19 06:27
体力ではなく、思考力、(予測的に)考える力だと思います。
Googleの方で細身の方は非常に多いです。
理数系などは思考力、問題解決能力を頭脳で使う分、体力の必要性はないと思います。
頭脳を集中して使っている職業の方は体力がなくても大丈夫だと思います。
投稿情報: Jan | 2011/08/13 18:21
思考力、知力に特化した人はベジタリアンで細身の人が多いです。(理数系、デザイン系等)
投稿情報: rolly | 2011/08/17 17:31